可能性

 

EVA(船外活動)は基本CAPCOM(地球側管制)による指示により実行される。SHIPCOM(宇宙船側管制)からEVAを申請するのは稀なケース。今回はその1例。コマンダー(隊長)ヴェンザの音の観測、ドローンの飛行を行った。

ヴェンザは独自に開発した録音機器を持参。EVAでの音を観測するという。また、ドローンは宇宙船内からの遠隔操作によるEVAでの飛行実施。どちらも重要任務となるが、並行された。2時間を超える最長のEVA。作業を進めると同時に酸素を保つ宇宙服のバッテリー充電も重要になってくる。

  

長時間EVAと2つのミッションの同時実施。機材の運搬の量は多く、しかも重い。動きにくい宇宙服での運搬作業に時間がかかる。

ドローン、カメラのセットを終え飛行開始。録音の作業も順調に進む。2時間という時間はあっという間に進む。ドローンの飛行状態は安定。ドローンカメラもはっきり映る。ヴェンザの録音も完了。

 

 

あとは撤退だけとなるがクルーは致命的なミスを犯す。バッテリーの少ない状態で作業を続けたことだ。酸素のない宇宙空間において少ないバッテリー量で作業をするのは自殺行為。作業が残りわずかだとしても、バッテリーの充電は必須なのだ。

 

EVAは7回の実施を終えた。難しいEVAであった。しかし、EVAエリアにおけるドローンの今後の可能性を発見。録音も全て完了。回を重ねるたびにクルー達のできることは増えていく。宇宙船での可能性が日に日に増していく。

 

ヴェンザの録音機器

 

今回のEVAで行ったヴェンザの音の観測。いったいどのような仕組みなのか。ヴェンザに聞いた。

 

要約をすると、ヴェンザの録音する音は振動数からきている。太陽からは常時フレアやコロナなどを含め、エネルギー(放射線)が放出される。振動というのは惑星を覆う磁気のバリアを放射線が通過することで起きる。その振動をキャッチし、音を採取する。常時わたしたちは放射線の降り注ぐ中にいる。そこから音を取ることはこの録音機械があればいつでもできるのだ。

 

ヴェンザはこの音を用い、独自に音楽を作成する。この音楽は宇宙からもたらされる音。楽器を使って奏でるものとは違う、宇宙からのメッセージが込められている。

 

ジャーナリスト 高階美鈴