極地から学び、宇宙から考える。
私たち人間は、なぜ宇宙に想いを馳せるのでしょうか。はるか昔から宇宙と私たち人間とは、切っても切り離せない関係にありました。古代の人々は、太陽や月、惑星の運行の様子、日食や月食といった天文現象を観測し、その法則性から暦をつくりました。あるいは「星占い」で吉凶を占ったように、宇宙の出来事が自分たちの生活に直接的に影響を与えると信じていました。古来より私たちの日常の生活と宇宙とは、密接に結びついていました。
しかしながら現代の宇宙は、投資家や科学者たち主導の宇宙利用や宇宙探査の推進によって、あまりに広大で遠いものになってしまったのかも知れません。「便利にする」「たどり着く」「自分たちが正しいことを証明する」。宇宙を統べることが、現代の私たちと宇宙との関わり方になってしまっているのではないでしょうか。
命を預かるという住まいの原点が試される極地。そんな厳しい環境にこそ、美しい暮らし方がある。設立代表者の村上祐資はそう信じて、これまで南極の昭和基地、世界の模擬火星実験基地、ヒマラヤのエベレストベースキャンプや富士山測候所など、極地の暮らしを踏査し続けてきました。そして剥き出しの環境で生活する人たちがもつ「その地に根を下ろす力」と、極地で育まれてきた「暮らしの規矩」の美しさに、魅せられてきました。本法人の意志は、そんな村上の活動の延長線上にあります。
「災難によって人は学ぶ」とは古代ギリシャの作家イソップの言葉です。宇宙や極地は、私たちの力を試す場所ではなく、「足らなさを知り」「足らなさを受け入れ」「足らなさと向き合う」ことを学ぶ場所です。宇宙を統べるのではなく、周囲の世界との繋がりを通して自らを知る。数年のうちに火星に到達するのではなく、宇宙の視点から永く地に足をつけた暮らしを考える。そんな活動が現代に求められているのではないでしょうか。
今回、法人として設立するに至ったのは、私たちの活動を継続して推進し、その領域を広げていくために、社会的に認められた公益的な組織にしていくことが最良と考えたからです。また宇宙を特別なものでも、誰かのものでもなく、多くの市民の皆さんの日常の生活と宇宙との結びつきを大切にしたいという私たちの理念から、特定非営利活動法人格を取得するのが最適であると考えました。
法人化することによって、行政や関連団体との連携を深めていくことができ、組織を確かなものにすることで、多くの皆さんが宇宙に想いを馳せることができる拠点を日本に築くことができると考えています。
特定非営利活動法人 FIELD assistant
代表 村上祐資